大学一回生だった19歳のときに旅を始めた。どこに降り立ってもそれなりの緊張感を持ち、出会う人々が「いい人」なのか「悪い人」なのか、さぐりつつコミュニケーションを取っていた。旅行者を狙う犯罪にはさまざまな手口があり、時々出会う旅人から体験談を聞いた。
自分の身を守るためには、疑いを持ちつつコミュニケーションを取るしかない。どこの国に行っても「悪い人」の割合は1%未満だろう。でも、旅行者にそういうが群がるのは確かだと思う。僕は結果としては被害にあったことはないので、国を離れる度に複雑な感情があった。「彼は最初から、いいやつだったのかな」。
4年前にコワーキングを始めた。日本での知名度が上がらず苦しんでいるときに、すでにコンセプトを共有している海外の仲間たちとともに歩もうと思い、インターネットを使ってコンタクトを取り始めた。その後すぐに、メドックマラソンに参加することになり、その素晴らしさに毎年参加することを決めた。そのついでに、世界各地のコワーキングの仲間と出会うことになった。ソウル、上海、香港、モスクワ、パリ、
ボルドー、カルカソンヌ、トゥールーズ、バルセロナ、マドリッド、サンセバスチャン、ローマ、マプト、シアトル。
コワーキングスペースには、コミュニティがある。近くから来ている人が多い。全員友達とまでは言わなくても、メンバー同士がお互いを「知っている」。日本のコワーキングスペースと同様、家にいるときみたいに、パソコンや財布を置きっぱなしで離籍している人がいる。「治安が悪い」といわれている都市に行っても、この事実は変わらない。
この「守られた空間」を訪れるようになり、学生時代からの悩みは解消した。最初から疑う必要はない。事前にコンタクトを取った人と、出会う人は「つながっている」。疑いのプロセスを省略して、最初から本題に入れる。仕事の話もできるし、その人なりの街のオススメポイントを教えてもらうこともできる。旅で現地に普通に住む人と、ノーリスクで出会える環境を手に入れたということだ。
僕はこの環境に満足していた。そしてそれ以上を望もうとも思っていなかった。しかし、今回の旅で、僕はこれ以上に積極的な旅のスタイルを見つけた。
それが「プレゼンの旅」だ。8月に構想1年半のウルトラシャルソンを実行。多くの人の助けがあり、自分の想像を超える価値と楽しみがあった。これを続け、伝えるために作ったのがこのプレゼン資料だ。20–30分これを元に話すだけで、聞いた人がとても喜んでくれた。そこで、これを訪れる場所でやたらめったらプレゼンしてみようと思ったのだった。
コワーキングスペースが各地に存在するし、Facebookという便利なツールが世界中に普及している。コンタクトを取り、返事をもらったところにプレゼンしたい旨を提案。OKが出た瞬間にFacebookでイベントページを作り、本人にシェアしてもらう。
この効果は絶大。ノーリスクで人に出会える環境を超えた。出会って数分で、僕の話しを注意深く聞いてくれるのだ。そして、ウルトラシャルソンができた背景に、僕の20年に渡る旅の体験と、7年間やってきた事業を通じた経験があるので、その辺りの話しも深く知ってもらうことになる。パクチーとか、旅と平和とか、コワーキングの意味とか、シャルソンの飛躍とか。そして、3年半前までほとんど縁のなかった東北について。何度も通い走ったことにより、実感を持って伝えることができた。
プレゼンの旅、万歳。海外で、リスクを排除して人と出会い、友人を作る上で今のところこれ以上の方法は思いつきません。ぜひみなさんもやってみてください!
この記事は佐谷恭の「パクチー起業論」からの転載です。